代表長さL,および代表速度Uを導入すると,非圧縮でのNavier-Stokes方程式を無次元化することができる.無次元化されたNavier-Stokes方程式を見てみると,レイノルズ数Reの等しい流れでは,流れの場全体が相似になることがわかる.このことを実際に式変形して確認してみよう.
Navier-Stokes方程式の無次元化
非圧縮でのNavier-Stokes方程式は以下のように表すことができた(ナビエストークス方程式の導出).
ρ[∂t∂v+(v⋅grad v)]=−grad p+μΔv
ここで,代表長さL,および代表速度Uを導入して,次のような無次元化をしよう.
x=Lx′,v=Uv′,t=ULt′,p=ρU2p′,∂x∂=L1∂x′∂,∂t∂=LU∂t′∂
これらを(1)に代入すると,無次元化されたNavier-Stokes方程式を作ることが出来る.
ρ[LU∂t′∂(Uv′)+(Uv′⋅L1grad′ Uv′)]=−L1grad′ ρU2p′+μL21Δ′Uv′[∂t′∂v′+(v′⋅grad′ v′)]=−grad′ p′+Re1Δ′v′
レイノルズ数
Reはレイノルズ数と呼ばれる無次元量で,次のように定義される.
Re=μρUL=νUL
以下のように書き直すと,レイノルズ数が慣性力ρU2と粘性力μU/Lの比となっていることがよく分かる.(そもそもの構成則を思い出すと,せん断粘性率μ[m⋅m/sN]は変形速度テンソル[mm/s]をかけて,単位面積当たりの力[m2N]となるような係数だった.)
Re=μU/LρU2
いま,2つの幾何学的に相似な流れがあって,粘性係数μや密度ρが異なっていたとしても,レイノルズ数Reが同一であれば,無次元化されたNavier-Stokes方程式は同じ形になる.このことをレイノルズの相似則と呼ぶ.
まとめと参考文献
今回は流体力学の教科書としてを紹介したい.流体力学というと,Navier-Stokes方程式を初めとする数式の理解が中心となりがちだが,この本は単に数式を追うのではなく,図や実験結果を多く取り入れて流体現象を解説する,というスタンスを取っている.一方で,扱っている流体現象の幅は広く,それぞれについての議論も丁寧なので,簡単にわかるという類の本ではない.序言には”流体の運動を取り扱う学問の入門書”とあるが,個人的にはむしろ,ある程度流体力学(基本的な数式)を学んだ後で読むと,数式と流体現象が結びついて理解が進むように思う.本棚に置いておいて,こちらの教科書ではこう書いてあったけど,ではどう書いてあったかな,というような使い方をするのがおすすめだ.