今回からは一次元流れについて解説していく.一次元流れの仮定とは「流体のあらゆるパラメタが断面の任意の点において等しい」とすることに相当する.以下のような条件下において,一次元流れの仮定をおくことができる.
- 断面積の変化が十分小さい
- 断面直径に対して流線の曲率半径が十分大きい
- 断面内の速度分布および温度分布の形状がほぼ一定である
今回は,このような一次元流れの仮定の下で,流体力学の基礎式がどのように表されるかを考える.具体的には一次元流れの連続の式,運動方程式,エネルギーの式の導出を行う.一次元流れの議論をするにはこれに加えて,気体の状態方程式を用いることが多い.ただ,気体の状態方程式についての解説は(熱力学・統計力学と関連させて)また別の機会に行いたい.
連続の式
管内の微小部分dzを占める流体の質量はρAdzと表せて,同領域を占める質量の時間変化と,流入出量の等式を立てることが出来る.ただし,m˙in[kgm−1s]は壁面等から流入出がある場合の単位長さあたりの流入量を表す.
∂t∂(ρAdz)=−∂z∂(ρAvz)dz+m˙indz
この式からdzをはらってしまえば,一次元流れの連続の式が得られる
∂t∂(ρA)=−∂z∂(ρAvz)+m˙in
定常流れでは以下の式が成り立つ.
dzd(ρvzA)=m˙in
質量流量(mass flow rate)をm˙(z)=ρvzA[kg/s]と表せば,dm˙=m˙indzで,定常流れでの連続の式は次のように表される.
ρdρ+vzdvz+AdA=m˙dm˙
さらに,壁面からの流入出がない場合であれば以下のように表される.
ρvzA=m˙=const [kg/s]ρdρ+vzdvz+AdA=0
運動方程式
まず,一次元のラグランジュ微分とオイラー微分の関係を確認しておく.
dtd=∂t∂+vz∂z∂
ここから,長さdzの流体にかかる力を整理する.
管側面にかかる圧力は次のように表される.
2π(r+21∂z∂rdz)cosθ1×(p+21∂z∂pdz)sinθ=2πrptanθ+πr∂z∂pdztanθ+πp∂z∂rdztanθ=p∂z∂A+π∂z∂(pr)dztanθ
where ∂z∂A=2πr∂z∂r=2πrtanθ
これより,流体に働く圧力の合計は次のように表される.
dFp=pA−(pA+∂z∂(pA)dz)+p∂z∂Adz+π∂z∂(pr)dz2tanθ≃−A∂z∂pdz
せん断応力による力の合計は次のように表される.ただし,せん断応力τ[N/m2]を単位体積あたりの運動エネルギー21ρv2[Ns/m3]でわった無次元数を摩擦係数fと呼ぶ.
dFw=−2π(r+21∂z∂rdz)cosθτdz×cosθ=−πDτdzwhere D≃2r=−21ρvz2πDfdzwhere f=ρvz2/2τ
これより一次元流れの運動方程式は次のように表される.
ρAdz(∂t∂vz+vz∂z∂vz)=−A∂z∂pdz−21ρvz2πDfdz
∂t∂vz+vz∂z∂vz=−ρ1∂z∂p−21vz2D4f
定常かつ壁面のせん断力を無視できる場合、以下の式が得られる.
vzdzdvz+ρ1dzdp=0
一方,微小でない領域について運動方程式を足し合わせると運動量の式が得られる。
ある領域の持つ運動量はM=∫ρvzAdzと表されて,運動量の微小変化はその領域の受ける外力の総和に等しい.
∂t∂(∫ρAvzdz)+vz∂z∂(∫ρAvzdz)=−∫A∂z∂pdz−∫21ρvz2πDfdz
定常状態を仮定し,両辺をzについて微分すると以下の式が得られる.
vzdzd(∫ρAvzdz)=−∫Adzdpdz−∫21ρvz2πDfdz
dzd(ρAvz2)=−Adzdp−21ρvz2πDf
さらに断面一定かつ壁面のせん断力ゼロを仮定すると,以下の式が得られる.
ρvz2+p=const
エネルギーの式
管内の流れについて,微小部分dzでのエネルギー保存を表す式考える.微小部分のエネルギーは内部エネルギーと運動エネルギーの和としてρA(e+2vz2)dzと表される.dzは省略して,微小部分のエネルギーの時間変化は次のように表される.
∂t∂[ρA(e+2vz2)]
流体の流入に伴うエネルギーの変化は次のように表される.
−∂z∂[ρAvz(e+2vz2)]
ここでは,摩擦力によっておこるエネルギー変化は無視している.もしこれを考慮する場合,単位長さ・時間当たりにされる摩擦による仕事(9)を考慮する必要がある.
−πDτvz=−2πfDρvz3=−ρAvzD4f2vz2
微小部分が圧力によって外部に対してする仕事は次によるエネルギーの変化は次のように表される.
−∂z∂[pAvz]=−∂z∂[ρAvz(ρp)]
単位質量に対する熱流入をq˙と表せば,エネルギーのつりあい式は以下のように表される.
∂t∂[ρA(e+2vz2)]=ρAq˙−∂z∂[ρAvz(e+2vz2+ρp)]
定常かつ断熱な流れでは,q˙=0かつρAvz=constより以下の式が成り立つ.この関係は,粘性によるせん断力が働く場合でも成立する.
h+2vz2=constwhere h=e+ρp
まとめ
一次元流れの連続の式,運動方程式,エネルギーの式の導出を行った.次回以降の記事で,これらの式を用いて一次元流れの物理的な特徴について考察していく.