熱力学において,エントロピーは系を特徴づける示量変数として登場したが,
統計力学では,マクロな変数エントロピーが,微視的な系の状態数と結び付けられる.
今回は,このことについて確認してみよう.
ボルツマンの関係式
ある閉じた系が部分系1と部分系2からなっているとしよう.これらの部分系はある体積V1,V2を持ち,分子の行き来が可能で十分な時間の後,平衡状態になっているものとする.このとき系のエネルギーはE=E1+E2でEはgiven,E1,E2は未知である.可能な状態数は(6)のように表すことができる.
W(E)=E1∑W1(E1)W2(E−E1)
ちなみに,W(E)は系のエネルギーがEで可能な状態数を表しており,系のエネルギーがE以下であるような状態数をΓ(E)と表せば,次のような関係になっている.
W(E)=dEdΓΔE=ΔΓ
ここで,系のエネルギーがEであるとき,部分系1のエネルギーがある値E1である確率Θ1(E1)は,単純に状態数の比で表される.
Θ1(E1) =W(E)W1(E1)W2(E−E1)
部分系1の量子状態をエネルギーについて見れば,ある平衡値E1にのみ急峻なピークを持っており,そこでΘ1(E1)は最大値をとっているはずである.なので,(7)の対数を取って,停留の条件を求めよう.
lnΘ1(E1)=lnW1(E1)+lnW2(E−E1)−lnW(E)
∂E1∂lnΘ1(E1)=∂E1∂lnW1(E1)+∂E1∂lnW2(E−E1)=∂E1∂lnW1(E1)−∂E2∂lnW2(E2)
よって(9)が平衡値の条件(停留条件)である.
∂E1∂lnW1(E1)=∂E2∂lnW2(E2)
一方で,熱力学より平衡状態では,逆温度(あるいは温度)が等しくなる.
∂E1∂S1(E1)=∂E2∂S2(E2)
(9),(10)を満たすような関係式として,以下のようなものを考える.
Si=coeff×lnWi+offset
offsetはゼロ,coeffは熱力学の単位系と整合するように定めるとボルツマンの関係式が得られる.
S=kBlnWkB≃1.38×10−23 J/K
まとめと参考文献