波動関数
任意の量子状態は,ある瞬間において,相空間上の波動関数(wave function)Ψ(q)によって表される.これの意味するところは「量子状態Ψ(q)を観測したとき,ある具体的な状態qで幅dqの中に現れる確率は∣Ψ(q)∣2dqである」となる.つまり∣Ψ∣2は生じうる様々な量子状態に関する確率密度となっている.確率分布であるということは,この値の相空間全体での積分は(1)のように正規化されているべきだ.
∫∣Ψ∣2dq=1
ある系の状態を表す物理量fの情報は,波動関数に含まれているはずだ.これを取り出すための装置として演算子f^を用いる.ここでfは離散スペクトルを持つものとし,対応する固有値fn,固有関数Ψnを持つものとする.固有関数Ψnはいずれも正規化されており,直交性を満たし,完全系を作っているものとしよう.
∫ΨmΨn∗dq=δmn
すると一般に波動関数は次のように表される.
Ψ=∑anΨn
固有関数Ψnに演算子f^に作用させれば,f^Ψn=fnΨnという関係が成り立つが,これは状態Ψnに対応する物理量fの具体的な値が固有値fnであるということを意味している.一般の波動関数Ψに演算子f^を作用させれば,次のように表される.
(f^Ψ)=∑anfnΨn
(1)に(3)を代入すれば,波動関数Ψの正規化条件は(5)のように書き換えられる.ここで,各∣an∣2は対応する固有値fnが得られる確率になっていることが分かる.
n∑∣an∣2=1
このことから,一般の状態Ψにおける物理量fの平均値fを次のように定義しておく.
f= n∑fn∣an∣2
これは,anを用いずに以下のように表すことができる.
f= ∫Ψ∗(f^Ψ)dq=∫(m∑amΨm)∗(n∑anfnΨn)dq=n∑an∗anfn
連続スペクトル
ここまではまず物理量の固有値が離散スペクトルを持つ場合について議論したが,物理量fが連続スペクトルを持つ場合についても,対応する定義づけができる.
(To Be Written)
エルミート演算子
物理量に対応する演算子f^はなんでもOKというわけではなく,いくつか条件がある.f^が線形な演算子で,固有関数Ψnが正規直交な完全系を作ること,などをすでに仮定してしまったが,ここでは物理的な要求として,各固有状態Ψnに対応する固有値(物理量fの具体的な値)が実数になること,また任意の状態Ψに対応する物理量の平均値が実数になることを仮定しよう.この条件は次のように表すことができる.
∫Ψ∗(f^Ψ)dq=∫Ψ(f^∗Ψ∗)dq
演算子の複素共役f^∗の意味はあまり明らかではない気がするが,とりあえずは行列とその複素共役をイメージしておこう.ところで,任意の演算子f^に対して,(10)を満たすような随伴作用素(Adjoint Operator)f^†を見つけることが出来る.
∫(f^Ψ)Φ∗dq=∫Ψ(f^~Φ)∗dq ⇔ ⟨f^Ψ∣Φ⟩=⟨Ψ∣f^†Φ⟩
ここで,Φ=Ψを(10)に代入して,(9)と比較してみよう.
∫Ψ∗f^Ψdq=∫Ψf^†∗Ψ∗dq
これを見ると随伴作用素f^†が,演算子f^に対応することが分かる.このような条件(11)を満たすものをエルミート演算子(Hermitian),または自己随伴(self-adjoint)と呼ぶ.つまり物理量fが実数値のみを取る場合,物理量の演算子f^はエルミート演算子となることが分かる.
f^†=f^
すでに直交性の仮定はおいてしまっているが,エルミート演算子の固有関数はそれぞれ直交することが示せる.
可換(commute)な演算子
ここでは,2種類の演算子f^とg^について次の3つの条件が同値であることを(ざっくり)確認しておこう.
f^ and g^ are commute⇕f^ and g^ have the common eigenfunctions Ψn⇕physical quantity f and g are simultaneously measurable
交換子(commutator)を次のように定義しておく.
{f^,g^}=f^g^−g^f^
(To Be Written)