運動量の演算子
外部場のない粒子について考えよう.このとき,系が平行移動したとしてもハミルトニアンは変化しない.演算子O^を平行移動の演算子とすると,このことはO^(H^ψ)=H^ (O^ψ)と表せる.つまり,ハミルトニアンとO^はcommute(可換)である.
O^H^−H^O^=0
ここで,移動量を微小とすれば次の関係が成り立つことが分かる.ただしaは粒子の番号である.(2)は量子系における運動量の保存を表している.
(a∑∇a)H^−H^(a∑∇a)=0
ここで,運動量の演算子をp^=c∇とおいて,準古典的な系の波動関数Ψ=aeiS/ℏに作用させてみる.
p^Ψ=c∇(aeiS/ℏ)=cℏiaeiS/ℏ∇S=cℏiΨ∇S
解析力学から∇Sは運動量pなので,c=ℏ/i=−iℏとなる.よって運動量の演算子は次のように表される.
p^=−iℏ∇p^x=−iℏ∂x∂, p^y=−iℏ∂y∂, p^z=−iℏ∂z∂
運動量の固有関数
運動量演算子に対応する固有関数をみつけよう.
−iℏ∂x∂ψ=pxψ, −iℏ∂y∂ψ=pyψ, −iℏ∂z∂ψ=pzψ
ためしに,一つ目の式にψ=Ceaxを代入してみると,以下の関係が得られる.
−iℏaCeax=pxCeax → a=ℏipx, ψ=C(y,z)eℏipxx
同様の関係がy,zにも成り立つので,固有関数は次のような形になるはずだ.
ψ=Ceℏi(pxx+pyy+pzz)=Ceℏip⋅r
また,波動関数は正規化条件を満たすべきなので,これをもとに(6)の定数Cを決定する.ただしdV=dxdydzである.
∫ψp′ψp∗ dV=C2∫eℏi(p′−p)⋅rdV=C2(∫eℏi(px′−px)xdx)(∫eℏi(py′−py)ydy)(∫eℏi(pz′−pz)zdz)=C2(2πℏ)3δ(px′−px)δ(py′−py)δ(pz′−pz)=C2(2πℏ)3δ(p′−p)
これよりC2(2πℏ)3=1であるべきである.ただし,デルタ関数に関しては以下の表式を用いて変形している.
δ(x)=2π1∫−∞∞eikxdk=2πℏ1∫−∞∞eiℏk′xdk′, where k=ℏk′
よって規格化された固有関数は以下の通り.
ψp=(2πℏ)3/21eℏip⋅r
これを位置rの関数としてみれば,運動量p/ℏが周波数となっている.これを用いると,ある位置のみを変数にもつ波動関数ψ(r)をフーリエ変換して,運動量領域での表示に変換することが出来る.
a(p)
これを用いてフーリエ逆変換してやれば,波動関数ψ(r)を再構成できて,運動量の固有関数で(連続的に)展開した形と見ることが出来る.
ψ(r)=∫a(p)ψp(r)d3p, where a(p)=∫ψ(r)ψp∗(r)dV